第1198話 行為計算否認
前澤友作氏の個人資産管理会社「グーニーズ」は、2021年に数億円の社債を発行し、全額購入したコンサルティング会社に3年間で2億円の利子を支払いました。グーニーズは社債の利払いを経費として計上し、一方、コンサル会社は同額の社債を発行。前澤氏の知人が全額購入し、グーニーズがコンサル会社に支払った利子の大半にあたる金額を利払いで受け取っていました。知人は前澤氏からの低利の貸付金で社債を購入したようです。東京国税局は、これを行為計算否認とし、グーニーズからの利払いは実質的に「寄付」と判断。前澤氏の個人資産管理会社に対して、4億円の申告漏れを指摘しています。
社債の利払いの場合、一律20.315%の源泉徴収で済みますが、寄付であれば最高で55%の贈与税の課税対象となります。
前澤氏は専門家の指導を基に修正申告したと回答して謝罪していましたが、仮に行為計算否認で課税されたのであれば、見解の相違ですので、脱税や申告ミスとは違い、謝罪の必要はないと思われます。
行為計算否認とは、法律で明確にブロックされていない節税について、それを認
めると課税の公平などの観点からして「不当」とされる場合に、税務当局の権限で行う課税処分です。そもそも何をもって「不当」なのかもよくわかっておらず、きちんとしたルールもないので実務上は「さすがにやりすぎ」と思われるスキームのうち、「巨額」の節税になっているものについて、税務当局は独断で判断して、この行為計算否認の規定で課税しているに過ぎません。つまり、税務当局の権限で一方的に課税するのが行為計算否認ですから、法を犯しているわけではなく、単に税務当局との見解の相違があっただけで、謝罪は必要ないのです。
曖昧なルールで課税するのが行為計算否認ですから、それに基づいて課税するには、必ず納税者に裁判を受ける権利を残す必要があります。このため、行為計算否認で課税する場合、税務当局は更正処分を行わなければなりません。更正処分は税務当局の権限で税金を課税するものですから、それに不服があれば、納税者は裁判ができます。更正処分とは異なり、納税者が自分で反省し、税務当局の指導に基づいて提出するのが修正申告であり、反省している以上裁判を行うことはできません。
しかし報道では、前澤氏が修正申告をしたというコメントが掲載されていました。報道か税務当局の課税処分か、どちらかが間違っていることになります。前澤氏が脱税をしてけしからんといった筋違いの指摘すら散見するところで、不正確な情報が氾濫しています。
それにとどまらず、前澤氏もコメントしているように、ここまで詳細な税務調査の情報が報道されること自体、税務当局の守秘義務からして許されない話です。インパクトのある納税者ということで、税務当局がマスコミにリークしたように思われます。
正しい情報が伝わってこない、そしてあってはならないことが普通に起こる。この事件の報道には、現状の我が国の税制の問題が如実に表れています。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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